■観損ねたぞ しし群…
■最大のテキはテンキ
11月中旬。普通ならこの時期、天気は周期的に変化するのですが、今年はミョーにいい天気が続きます。週間予報もずっと晴れ…。イヤ〜な予感がします。そして、こーゆー当たってほしくない予感ほど、当たるんですよねぇ。週間予報に17、18日がでるようになると、そこには雲や傘のマークが…。気温の変化からすると、どうやら冬型の天気のようで…。
ここ岡山(南部)では、冬型の天気の時には、中国山地を越えた雲が結構流れてきます。当日の予報も、曇時々晴。かなり雲に邪魔されそうな雰囲気です。しかし、まだおよそ一週間先のこと、ずれるかもしれないし、はずれるかもしれない。もうちょっと様子見っと。しかし、1日経ち、2日、3日…、予報が変わる気配なし。どうやら、決定的のようです。そして、このときになって、頭の片隅にあった考えが大きく膨らみはじめました。「高知に逃げよう!」。
■ウラメっちゃった
17日昼、岡山は曇。立体写真を撮るためにおいそれとは動けないF原T生氏を尻目に、私は、後輩のS氏とともに、高知は室戸岬を目指して、岡山を出発しました。往復の高速代(含む瀬戸大橋)なんざ、流星雨を観るためなら安いモンじゃ!。
さて、車は室戸に向かって順調に走っている一方で、私の心の中には、別のイヤ〜な予感が広がっていました。マスコミが騒いでいるのです。カーラジオから流れてくる番組は、どれもこれも一言目、二言目には「しし座流星群」、まるで、選挙期間を思わせる連呼ぶり…。天文界には、「マスコミが騒ぐ天文現象はポシャる」という法則(ジンクス)があります。ついこのあいだ大出現した「ジャコビニ流星群」などは、そらもー見事にマスコミの騒ぎ方と流星数が反比例してます。こりゃ、ヤバいなぁ…。
実はこのとき、日本でのあまりの騒ぎぶりにあわてたしし群は、地球の裏側に隠れて冷や汗をかいていたのです。こうしてしし群は、予想より17時間も早い17日午前11時頃に、観測者が留守中(←日本や中国に出かけている)のヨーロッパの上空で、大?出現したようです。
一方、そんなことを知る由もない我々に、ラジオから、さらに追い打ちをかける言葉が…。「今日のテーマは“裏目っちゃった”」。ふ…不吉な…。
後から思えば、このラジオが、これから先の我々の行く末を暗示していたのです。
■獅子涙々…
午後4時頃、我々は室戸に到着、このとき室戸は、強風が吹き荒れ、明け方くらいに通過した前線の雲が、まだかかっていました。しかし、『これから寒気が吹き出してきて、前線の雲は南に押し下げられる』と信じ切っていた我々は、早速観測地探しをはじめました。この観測地、『車で簡単に乗り付けることができ、他の人がそう滅多にやってくることがない、開けた場所』という相反する条件を満たすところを探さないといけません。特に今夜は、マスコミの異常とも言える騒ぎぶりからして、非常に多くの人が、夜中によく見えそうな場所を求めて移動しそうです。ほんまに人の来そうにないところを探さないと…。で、約1時間、車の底を擦ったりしながら探して、何とか目星をつけました。すると後は、腹ごしらえをして、天気の回復と、夜半を待つのみです。さて、その天気…。
食料を調達し、腹ごしらえも終わった午後8時、雲間から星は見えるものの、まだ曇っています。
午後10時、おかしい、まだ晴れない…。心の中にも広がる暗雲…。
ついに18日午前0時、しし群の流星が見え始める(輻射点が昇ってくる)時間です。ここに来て、ようやく晴れ間が広がってきました。やったやったと2人喜びながら、私は0時20分より観測開始。0時30分にはほとんど雲もなくなり、見事な夜空が広がりました。しし群の流星も、長経路のものがいくつか見え、この時間にしては結構見えているような感じです。明け方に向けて、期待は膨らみます。しかし…。
0時40分、再び雲がでてくる。
0時50分、ほぼ全天、薄雲に覆われる。
午前1時、4等星が見えるかどうかくらいの空の下、流れ星に願いを託す。「せめて2時からは晴れてくれぇ…」。
午前2時、流れている間に3回唱えることができない(だってしし群、継続時間短いんだモン)せいか、願いは叶わず、ついに星の1個も見えなくなってしまう。仕方ないので、ちょっと腹ごしらえをして、天に祈りなおす。「せめて3時からは晴れてくれぇ…」。
午前3時、祈りが少し届いたか、多少星が見えてくる。1等より明るい流星が、ちらほらと流れているが、流星雨にはほど遠いようだ。よし、天に祈って、星に願おう!。「せめて4時からは晴れてくれぇ…」。
午前4時、相変わらずの空、結局晴れなかった。我々の叫びが虚しく風に流される。
「雲の (息継ぎ) ばかやろおおおおおお………」
というわけで、この雲、厚くなったり薄くなったりはしたものの、ついに夜が明けるまで晴れることはありませんでした。できるもんなら、雲、タコ殴りにしてやりたいです(雲をつかむような話だなぁ)。けど、ま、3等星くらいまでしか見えない中、時折流れる明るいしし群の流星は観ることができたし、この感じだとせーぜー、ペルセ群の極大並程度だし……いぢいぢいぢいぢ……
さてそのころ、我々が脱出した岡山はといいますと…、なんとよぉぉぉく晴れていたんですねぇ。さすがは「晴れの国 岡山」、う〜む、侮れん。それにつけてもなんとタイムリーな「今日のテーマ」。
とはいえ、私の裏目度、東アジアまで観測に来た欧米の研究者に比べれば、まあましですな…。さらに言えば、ほんの一時でも晴れた空の下観ることができ、また、薄雲を通しながらも活動の片鱗を伺うことができただけ、全く見れなかった人からすれば、贅沢なことですな…。ついでに言えば、どうせ日本ではポシャったと言う事実に、かなり補完されましたな…。
■教訓?
で、今回のしし群から得られた教訓…。
- 「晴れの国 岡山」をなめてはイケナイ。
- 「マスコミが騒ぐ天文現象はポシャる」 という法則(ジンクス)を再確認した。
…というわけなので、マスコミのみなさん、どうか、来年(1999年)はそっとしておいてくださいね。
〔L!b〕